- 戦略的人事にITを活かす - 人材・組織システム研究室
人事部門のクライアントは「従業員」である、とはよく聞く言葉です。
しかし、人事が業績に貢献していく、という発想になったとき、その発想だけでは不十分なのではないか、という考え方があります。
まず、自社の顧客も、人事部のクライアントだと考える、というものです。
つまり、人事部門の仕事の成果を
▼ 顧客が受けられるサービスや製品の質を保証し、向上させること
▼ その結果顧客満足の上昇
と考えます。
例えば、人事部門の仕事である、人事考課の仕事の成果は、
「自社の顧客が、自社の人事考課の評価シートをみたときに、『これなら自分たちにいいサービスをしてくれる人たちがいそう(育ちそうだ)』と納得してもらえるだろうか」
という基準で判断してみるのです。
また、採用であれば、
「『こんな人たちを採ってくれているのなら、この会社のサービスは大丈夫だ』と優良顧客が納得してくれる採用をしているだろうか」
と発想してみる。必要であれば、優良顧客に実際に聞いてみる。
これは『人事が生み出す会社の価値』(デーブ・ウルリヒ/ウェイン・ブロックバンク著)で紹介された考え方ですが、人事が業績に貢献してくためには、取りいれる価値があるものでしょう。
おそらく、そういった視点を持って動きだすと、人事部門の行動範囲も変わってくるし、結果として実行される施策も、微妙に異なってくるのではないか、と思います。
これに加えて、経営層も、人事部門のクライアントと考えることができます。
「経営者に依頼されたデータを言われた通りにきちっと出している」という会社は多いと思います。
しかし、それだけでは、「優良なクライアントサービス」とは言えません。
経営層が人材や組織に関して、決断をしたり、未来を予測したりするための情報を、常に提供し続けることができている。経営層が明示的に求めるものは、あくまで彼らの予測の範囲内の仮説です。それを超えて、人材マネジメントのプロとして、提案ができている。ここまでできて、優良なサービスと言えるでしょう。
そして、現場のマネジメント層も、人事部門のクライアントとして捉えてみる。
例えば、研修実施1年後、もしかすると2年後3年後になるかもしれませんが、「あの研修は本当に役に立った!」と言ってもらえるものを提供できているのか。また、それを測るためのデータ管理ができているのか?
人事部が人事情報システムを導入してくれたおかげで、「日々のマネジメントに役立っている!」と現場のマネジャーに言ってもらえるだろうか。
このような考え方をしていくことで、本当の意味で現場をサポートし、その結果として現場が業績を上げていくことに貢献できるのではないでしょうか?
最後に
人事部門が抱える業務は、間違いや遅れが許されないものも少なくなく、また、直接お金を稼げるわけでもないので、どうしても「守り」の働きに重点が置かれがちです。それはそれで大事なことですが、同時に、「人事も業績に貢献するのだ」という発想で、新しい人事部門のあり方を目指す時期がきているのではないかと思います。
次に、戦略的人事とデータ活用について考えてみたいと思います。